いろいろとーく

最後の日

覚えている

他人が決めたわたしを終わらせたあの日

わたしの最後の日

それまでのいい人や言えない性格やいつも笑顔や優しいや当たり障りないやはっきりしないや

そんな他人が決めたくっだらないわたしをやめることにした

そこには確実にわたしの要素はある

そうでありたいという希望もある

だけど他人は都合よく解釈していく

ぞんざいに扱える存在として勝手に作っていく

ほんとにくだらない

そんなくだらないことに囚われた時間がわたしをおかしくする

そんなくだらないことが蔓延する空間があたしをおかしくする

他人が決めたわたしはこの世に存在していない

存在しなくても生きていかなければならない

1日の始まりが一番怖く緊張していた

目の奥に力を入れてそのドアを見据える

自分の心に問いかけながら

心の震えを感じながら

体を落ち着かせ

そのドアを開ける

この時がいちばん気合がいる時だ

震えるのは体じゃない、心だ

自分の奥底からガタガタと震えてくる

死さえも感じる

自分自身にも怖くなる

だめだと思ったことを乗り越えられる成功体験を

ただただ繰り返し積み上げていく毎日

毎日が緊張の連続

いつまで乗り越えられるのかわからない

不安だけが膨れあがる

いつか潰れる

いつか泣く

そのいつかに怯える

怯える自分と注意深く接していたから

その時がきた時

不思議な反応が起きた

心と体が会話した

心からの言葉を受け取った

体は妙に落ち着いていた気がする

頭の中はいろんなことを考えた

抱えている仕事や人の目仲間の顔これからのこと自分のこと

だけど頭に浮かんだこと全部今のわたしには何もできない

どうしようもできない

何が大事とかこれからどうなるとか

考えられない

わたしがわからない

ただただひとつはわかっていたこと

ここにいちゃだめ

これだけがはっきりとわかった

ここから出なきゃ逃げなきゃ一刻も早く

わかっていたことはそれだけ

それしかわからなかった

だからそれに従った

ここを出よう

取り乱したくなかった

誰にも気づかれたくなかった

この心の破裂しそうな感じや焦りや恐怖

今にも泣き出しそうな目

誰にも知られたくなかった

他人が決めたくだらないわたしのままでいいからここから消えたかった

全ての電源を落とし立ち上がった

筆記用具を持って後ろの人に一言早退すると告げ

私物をロッカーに閉まい

名札も下げた

通常通りの仕事終わりだった

違っていたのはわたし

部屋の中であたしだけ

あれが最後の日だった

背中であのドアが閉まるのを感じた

わたしが見たのは前だけ

あの日からあのドアを開けていない

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